感染後、2〜7日の潜伏期ののち、排尿時痛や外尿道口からの分泌物を自覚します。 分泌物はいわゆる”膿”で、黄白色を呈することが多いです。 診断は基本的に、検尿で可能です。 尿沈査中に多数の白血球や淋菌を確認することによって、 淋菌性尿道炎の診断がつきます。(おしっこを採るだけです) 最近では、検尿の延長で精度の高い淋菌の核酸増幅検査(遺伝子診断)が可能ですので 精査が必要な場合でも採ったおしっこで確定診断が可能です。 治療は抗生剤で可能ですが、症状が良くなったからといって自己終了した場合、 尿道炎の再発の可能性だけでなく、後述の前立腺炎や精巣上体炎を起こす可能性があります。 本邦においては(高松でも)、以前多用されたニューキノロン系の抗生剤は すでに半分以上の患者で効果がないようです。 使用する薬剤は、その地域の淋病の治療経験の豊富な診療所で 選択していただいたほうが良いかもしれません。
淋菌の子宮頚管への感染で発症します。 自覚症状としては分泌物の増加(おりものの増加)を生じますが、 自覚症状は軽いかほとんどない場合が多いようです。 感染が骨盤内に波及すると発熱や痛みなど、重篤な状態へ移行します(骨盤内炎症症候群) 検査は淋菌の検出によりますが、男性では高い検出率を誇る核酸増幅検査でも 正診率は90%未満といわれています。
オーラルセックスの増加により、男性・女性供に性器の淋菌感染症患者の 3分の1ほどが陽性とされています。 しかし、診断は困難です。 検査は可能ですが、自費となります。
感染後、1〜3週間の潜伏期ののち、排尿時痛や外尿道口からの分泌物を自覚します。 排尿時の痛みや外尿道口分泌物などの自覚症状は 淋菌性尿道炎に比べて軽症の場合が多いようです。 排尿時痛は尿道の違和感やかゆみ程度のことやまったくない場合もあります。 尿道からの分泌物も淋菌感染症と異なり、 透明で漿液性や粘液性で量も少ないことが多いようです。 以前はやはり、尿道から分泌物を採取して分離培養検査を行っていましたが、 最近では検尿の延長でクラミジア抗原の核酸増幅検査(遺伝子診断)が可能ですので、 精査が必要な場合でも採ったおしっこで確定診断が可能です。 クラミジア感染症は採血で抗体(クラミジア感染の痕)を検査して診断を行うこともあります。 治療は抗生剤で可能ですが、やはりきちんと治癒したことを確認する必要があります。 症状が良くなったからといって自己終了した場合、尿道炎の再発の可能性だけでなく、 後述の前立腺炎や精巣上体炎を起こす可能性があります。 現在、一回の内服で治療可能な抗生剤が保健適応となりました。 ※クラミジア前立腺炎・クラミジア精巣上体炎 クラミジア感染症は自覚症状に乏しいため受診までに時間がかかり、 淋菌感染症より精路感染症を多く発症してしまいます。 これらの感染症は、尿道から精路を逆行して前立腺や精巣上体(副睾丸と言われていたところ) へクラミジア感染が及んだ状態です。
女性のクラミジア感染症は約半数でまったく自覚症状がないとも言われていますが、 自覚症状としては分泌物の増加(おりものの増加)を生じます。 淋菌より多くの頻度で感染が骨盤内に及び、 発熱や痛みなど、重篤な状態になりやすいとされています。 ※骨盤内炎症症候群 子宮付属器炎(卵管炎、卵巣炎)や骨盤部の腹膜炎をいいます。 クラミジアは淋菌より高頻度で発症します。 急性腹症(腹部の急激な痛み)として救急外来へ受診することもあります。 また、卵管炎は後遺症として卵管障害により、卵管妊娠や不妊症の原因となります。
オーラルセックスの増加により、 男性・女性供に性器の淋菌感染症患者の5分の1ほどで陽性とされています。 咽頭のぬぐい液を用いて核酸増幅検査を施行すれば検査可能ですが、診断は困難です。
・第一期梅毒 感染から3週間ほどで病原体進入部位に小豆大から指先位の硬い腫瘤を生じてきます。 これを初期硬結といいます。 初期硬結はしばらくすると中心に潰瘍を形成し硬性下疳となります。 これらは、疼痛などの自覚症状はほとんどありません。 やや遅れて、鼠径部などのリンパ腺が腫れてきます。 これらは2〜3週間で自然に軽快し無症状となります。 ・第二期梅毒 病原菌は、症状が消えたあと血行性に全身に広がり 皮膚や粘膜にいろいろな皮膚症状を呈します。 いろいろありますが、例えば 梅毒性バラ疹:2-3cm以下で目立ちにくい、薄い赤色のシミ 丘疹性梅毒疹:小豆大位の赤褐色の結節 などです。 丘疹には病原体が多数生息し、感染源となります。 第二期梅毒の時期、感染後3ヶ月から3年に渡ってこれらの皮疹が生じて多彩な変化を見ます。 ・第三期梅毒 3年以上で、結節性梅毒疹や皮下などにゴム腫が生じてきます。 ・第四期梅毒 さらに病気が進行すると、梅毒により大動脈炎、大動脈瘤、進行麻痺などの症状が現れてきます。
臨床症状はないが、血清反応などが陽性のものです。 上記の各病期の移行期などや陳旧性梅毒がこれにあたります。 治療を要しない場合もありますので、正確な判断が必要です。
梅毒に罹患している母親から出生した子供で、感染が起こっている場合です。 生下時に発症している場合と学童期以降に発症する晩期先天性梅毒があります。
抗生剤で治療します。 梅毒の完治には病期に応じた適切な治療・観察が必要ですので、 根気強く治療にあたる必要があります。
外陰部や口唇からヘルペスウィルスが放出されている状態で性的接触が起こると感染が起こります。 2〜10日間の潜伏期の後に外性器に病変が出現します。 皮膚にかゆみや痛みを伴った水泡が出現し、 数日後に水泡が破れて浅い潰瘍を作ったり、傷から膿が出たりします。
性器ヘルペスは再発が見られます。 再発時にも同様の症状が出ますが、初発に比べて軽いことが多く、 短期間で軽快することが多いようです。
男性と同様に外性器の違和感から発症し、 数日で大陰唇から小陰唇に渡り広範に潰瘍形成を起こします。 しばしば男性より症状が強く、座るだけで痛かったり、歩行が困難になることもあります。 また女性は排尿困難などの末梢神経障害が出現することもあります。
やはり男性と同様に再発することがあります。 初発時に比べて症状が軽めに済むことが多いのも同様です。
最近、尿道炎の原因として注目されています。 原因としてUreaplasma urealyticum、Mycoplasma genitalium他が分かっています。 残念ながら通常診療の中での確定診断は困難です。 臨床症状を注意深く見ながらの治療となります。 高松でも時々疑わしい方が受診されています。 幸い、何とか治療は可能です。
それぞれの肝炎ウィルスは性交渉によって相手に感染する可能性があります。 肝炎ウィルスによる各種肝炎の診断・治療内容は別稿に譲りますが、 肝炎もウィルスの感染により性行為感染症となることはよく知られています。
HIV感染症は血液や体液を介して感染するウィルス感染症で、性的接触でも感染します。 HIV抗体を測定して診断します。 自費での検査はこちらを参考にしてください。